ここでは、むくみの原因になる「リンパの流れ」について解説します
よくリンパマッサージという言葉を聞きますが、そもそもリンパとは何なのでしょうか?
もくじ
リンパとは?
私たちの体の中には「リンパ管」という管が、血管に沿って網の目のように張りめぐらされています。リンパ管の中には体液の一種である「リンパ液」が流れていて、血液と同じように体内を循環しています
リンパ液
リンパ液は全身をめぐりながら、内臓や筋肉、血液などに栄養を運んだり、水分を調節したり、老廃物や脂肪を回収して排出したりします
リンパ管
リンパ管の途中には「リンパ節」という器官が異物の混入をチェックして老廃物をろ過したり、白血球の量を調整して免疫機能を正常に保つ働きをしたりしています。リンパ節は、鎖骨のくぼみワキの下足の付け根、ヒザの裏側など、体のさまざまな場所にあります
リンパ節
体内の老廃物は、普通は静脈を流れて心臓に戻り、腎臓でろ過されて排出されます。しかし、老廃物が多すぎると静脈に入りきれません。そこで、入りきれなかった老廃物や余分な水分はリンパ管によって回収され、鎖骨のリンパ節(頸部リンパ節)に集められて大静脈、腎臓を通って体の外へと排出されます
リンパ節やリンパ管、リンパ液などを総称して「リンパ」といい、「リンパマッサージ」とは、リンパ管を刺激しリンパ液の流れをよくし、体内にたまった廃物、毒素、脂肪などを排出するマッサージのことです
リンパの流れがなぜむくみの原因になるのか
「人間の体の7割は水分」とよくいわれますが、体内の水分(体液)はおもに血液、リンパ液、組織液(組織間液、細胞間液)などで構成されています
そして、その水分の7割以上を占めるのがリンパ液です。心臓で作られた新しい血液は動脈から毛細血管へと流れ、体中に養や酸素水分などを運びます。同時に、老廃物や余分な水分などは静脈やリンパ管が受け取り、心臓へ戻っていきます。ただし、静脈はー定量の老廃物や水分しか受け取って処理できないため、溢れた分はリンパ管が請け負うことになります
また、静脈はたんぱく質や脂肪を運ぶことができませんが、リンパ管は老廃物をはじめ、脂肪やたんぱく質、糖質、毒素、乳酸、化学物質などをリンパ液に乗せて運び、体外に排出できます。そのため、美容においても健康においても、リンパの流れはとても重要な問題です
動脈を流れる血液は、心臓という強力なポンプによって勢いよく送り出されます。しかし、リンパ管にはそぅしたポンプがないので、リンパ液の流れはとてもゆっくり。筋肉や内臓の動き、呼吸による横隔膜の動きなど、周囲からの刺激によって流れています
そのため、老廃物の量が増えたり、運動不足で筋肉を動かす機会が減ったりすると、リンパ液の流れはすぐに悪くなり、「むくみ」をはじめとする体調不良の原因となってしまいます
一日中デスクワークをしていると、足やふくらはぎにむくみを感じるのもそのためです。だから、運動を心がけたり、リンパマッサージなどで外部から刺激を与えることが必要になってくるのです
リンパはむくみの他にも悪影響が
リンパの流れが滞ると、まず余分な水分や老廃物、毒素などが皮下組織にたまります。その結果、免疫機能などに支障を来し、次のようなさまざまな症状があらわれます
悪影響①むくみ
むくみは、皮下組織に過剰な水分がたまった状態。リンパの流れが滞り、体内の水分や老廃物の回収を十分におこなえないためにあらわれる典型的な症状です
そしてむくみは冷えや肩こり、肌荒れ、肥満といったさらなるトラブルを引き起こす原因となります
「夕方、靴がきつくなったり、指輪を外しにくくなる程度のこと」などと甘く見ていると、むくみが慢性化して大変なことになってしまいます
悪影響②肌荒れ
血行不良は代謝の悪化も引き起こします。代謝が悪くなると、古い角質がたまって肌がくすんだりニキビができたり、張りがなくなってシワやたるみができるなど、肌のトラブルが次々とあらわれます。肌に張りがないとリンパの流れも悪くなるので、さらにむくみがひどくなることもあります
悪影響③肥満
リンパ管は脂肪も回収するので、その流れが悪くなると、恐ろしいことに脂肪がたまりやすくなります
ふつうの脂肪は運動や食事などで落とすことができます。しかし、脂肪のまわりに老廃物や水分がたまると、それらが脂肪に付着して「セルライト」という肥大化した脂肪細胞ができてしまいます
セルライトは分解されにくく、さらに脂肪を蓄積していきます。肥大化した脂肪はリンパ管や血管を押しつぶし、さらに流れが悪くなります。血行が悪くなると基礎代謝量も落ちるので、ますますやせにくく太りやすい体になります
セルライトはお尻や脚、ニの腕など、体の気になる部分にできやすく、ボデイラインを崩す元凶です。また、太った人に限らず、ー見やせている人にもセルライトは見られるので要注意です
悪影響④冷え症
リンパ管は血管と讓に関係していて、リンパの流れが悪いと血液の流れも悪くなります。そして冷えは、血管が収縮して血流が悪くなることで起きます
血液は体の細胞に栄養や酸素を運んでいるので、その働きに支障が出ると、肩こりや肌荒れ疲労などさまざまな体調不良をまねきます
また、血行が悪くなることでリンパ液の流れもさらに悪くなるので、悪循環のスパイラルにますますはまっていきます
悪影響⑤肩こり
体が冷えて血行が悪くなると、疲労物質(乳酸)の排出もうまくできなくなります。疲労物質がたまることで起こるのが、肩こりです。
また、疲れがずっと抜けずにいることで体調を崩し、風邪を引きやすくなったりもします。リンパの流れをよくすることは血行促進にもつながるので、疲労物質も血液に乗って排出されるようになり、肩こりの症状も改善されていきます
むくみは体からの重要なサイン
このように、リンパの流れが悪くなり、排出されるべきものが体内にたまっていると、むくみにはじまって、肥満や体調不良にまで起こしてしまいます。
一過性の症状に留まっているうちにマッサージなどで対処し、できるだけ早くリンパの流れを正常に戻すことが大切です。
リンパの流れが悪くなる原因は?
リンパの流れが悪くなると、さまざまな症状があらわれ、それらがさらにリンパの働きを阻害するということがわかりました。では、そもそも何がきつかけでリンパの流れが滞るのでしようか?
毛細血管と各細胞同士の栄養や酸素、老廃物のやりとりは、血管中の圧力や皮下組織の圧力といった力を利用しておこなわれています。心臓から送り出された血液が流れる動脈俱は皮下組織よりも圧力が高いので、水分が押し出されて、いっしよに栄養や酸素が細胞に送られる。逆に、静脈側は皮下組織よりも血管内の圧力が低いので水分が流れ込み、それによって細胞から老廃物や二酸化炭素を回収します
たとえば「張りがある」といわれる肌は、皮膚に弾力があって皮下組織圧も高い状態で、静脈に水分を押し出すことができます。しかし、肌に弾力がないと皮下組織圧が低く、きちんと水分を押し出せなくて、皮下組織に水分や老廃物がたまることになります。これが「むくみ」です
皮下組織の水分が増えると、静脈よりも処理能力があるリンパ管が働いて排出しようとします。しかし、リンパ管にも限界があるので、その働きを助ける筋肉の動きなどが少なければ流れは滞ってしまいます。リンパの流れが滞る主な原因としては、次のようなものが挙げられます
リンパの働きを悪化させる原因①運動不足や筋力不足
リンパ液も血液も、筋肉の動き(伸縮)によって圧迫されて流れます。そのため、運動不足の状態ではこうしたポンプ機能が弱くなり、流れも悪くなります。デスクワークが中心で、ー日のほとんどを座った状態ですごすという人は、足のむくみを感じやすいはずです
また、そもそも筋肉が少なければポンプ機能も弱くなります。男性よりも女性のほうがむくみやすいのも、筋肉量の差によるものです
リンパの働きを悪化させる原因②冷え
体温が低くなると、血液の循環も悪くなります。急な気候変化や、冷房の付けっぱなしの睡眠などで体が冷えると、血行が悪くなり、リンパもその影響で流れが悪くなります。血液の循環が悪くなると、皮下組織に水分がたまり、むくみを誘発します。むくみがあらわれるとどうなるか……というのは前述の通りです
体を冷やすことも、リンパの流れが滞る大きな一因となります
リンパの働きを悪化させる原因③体を締め付ける衣類
リンパは、「シャワーの水圧」程度の力でも影響を受けるくらいデリケートです
きつい下着や服を身につければ、十分リンパの流れを阻害することになります。圧迫によってリンパ管がつぶれたりすれば、流れは悪くなり、水分や老廃物がたまりやすくなります
スタイルをよく見せようとすることが、かえってボデイラインを崩す原因になっているわけです
リンパの働きを悪化させる原因④不規則な生活やストレス
食事や睡眠などの不規則な生活が続いたり、精神的なストレス塞じる状況が長引いたりすると、私たちは体調を壊しやすくなります
これは自律神経のバランスが崩れるから。自律神経は、消化器・血管系・内分泌腺などの機能をつかさどっているので、その影響は体調に如実にあらわれます
不規則な生活も心の悩みも、体にとっては大きなストレスです。自律神経が心身のストレスに対処しようとした結果、血管が収縮して血流が悪くなったり、筋肉が緊張してリンパ管への刺激が減ったりします
しかし、これとは反対の流れで、マッサージによってリンパの流れや血行を改善し、体の緊張を解いて心の安定を取り戻すことも可能です