徒手リンパドレナージ(MLD)の効果と手順・ポイント

徒手リンパドレナージ(MLD)とは

むくみを解消するために行われるリンパドレナージはー般的に徒手リンパドレナージを指します

ここでは徒手リンパドレナージ(MLD)の効果と手順・ポイント、徒手リンパドレナージをしてはいけない人(禁忌)等を解説します

徒手リンパドレナージ(MLD)とは?

ドレナージとマッサージの違い

ドレナージ(Drainage)という言葉は、排水・排液などという意味で、文字通り手技によって不要なリンパ液を排液するための手当で、基本的には常に皮膚表面に手をタッチした状態で、優しく、ゆっくり、かつ、リズミカルに行うものです

ドレナージとマッサージの違い

「ドレナージ」は「マッサージ」とは異なります

「リンパドレナージ(lymph drainage)」は「皮下組織内浮腫液排液法」で、

ー方、医業類似行為としての「あん摩・マッサージ・指圧」は、「体重をかけ、対象者が痛みを感じる強さで行う行為」との認識があり、区別して考えた方が良いでしょう

「マッサージ」をしてよい資格は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律等で、医師以外の者についての規定がなされています。リンパドレナージは、主に腓腹筋静脈ポンプを刺激し静脈還流の促進を図るいわゆる「マッサージ」とは異なります

リンパドレナージ

リンパドレナージは腕や脚の浮腫液を深部リンパ系に送り込み、最終的に頸部で静脈に介流させる手技です

脚のリンパ(浮腫液)は鼠径部のリンパ節を経て、深部リンパ系に入り込むことでがんの術後などで患部の鼠径部のリンパ節が障害されると脚の浮腫液は深部に入ることができなくなります

そのためリンパドレナージでは、流れの悪いリンパ節を避けて他のリンパ節(例えば脚のリ
ンパ浮腫では左腋窩リンパ節など)から深部リンパ系へ浮腫液を送り込みます

この場合、車の渋滞と同じで、先の方が渋滞していては流れないので、リンパの流れの先頭から順に流すようにしていくのがポイントとなります

徒手リンパドレナージ(MLD)の効果

効果

徒手リンパドレナージの効果は以下の通りです

  • 組織液の流れを促し、リンパの生成を促進する
  • リンパ節内の流れを活性化する
  • 線維症の改善
  • 局所的に血液への圧力を高めず、血流量を増加させる

徒手リンパドレナージをしていけない人(禁忌)

徒手リンパドレナージをしていけない人(禁忌)

絶対禁忌

悪性腫瘍活動期(一部適応となる場合もある)、急性炎症、心性浮腫、新しい血栓

相対的禁忌(細心の注意が必要なもの)

気管支喘息、治療後のがん、妊婦、静脈瘤

特定部位禁忌(頸部)

甲状腺機能亢進症、頸動脈洞反射九進、洞性小整脈

特定部位禁忌(腹部)

妊娠中、生理中、手術後の腹腔内の癒着、放射線治療後、膀胱炎や大陽炎、炎症性腸疾患、腸閉塞、多発性憩室炎、大動脈瘤、骨盤静脈血栓症、てんかん

徒手リンパドレナージの手順

手順

徒手リンパドレナージの手順、ポイントは以下の通りです

徒手リンパドレナージの手順

まず頸部のリンパ管と静脈の合流部位をマッサージし、ついで深部リンパ系、そして鼠径リンパ節を中心部(心臓)へ向けてマッサージし、その上で脚のマッサージを太腿、下腿、足の順でそれぞれの部分を中央部に向けてマッサージします

下腹部・殿部にもむくみが広がっている場合が多いので、その部分にもマッサージを行います

硬くなった部分は、特に入念にマッサージします

徒手リンパドレナージのポイント

  1. リンパの流れる方向を考慮して排液する
  2. 痛みを与えずソフ卜に行う
  3. 間欠的にプレッシャー(圧力)をかける
  4. スローでリズミカルな動きで行う
  5. 基部から始め、末端へ向かって行う
  6. 皮膚の表層を動かす(1〜2秒に1度の割合で皮膚をストレッチする)ように行う

徒手リンパドレナージの基本技術

徒手リンパドレナージの基本技術

徒手リンパドレナージの基本となる技術を4つご紹介します

①静止円の技術

まっすぐに伸ばした指を皮膚上に平らに置く。皮膚上をすべらせずに円を描くようにストレッチさせる。リンパ液の排液方向に、プレッシャーをかける。皮膚が元の位置に戻るように力を抜く。主にリンパ節や広い面に対して行う

②ポンプの技術

皮膚の上に掌を平らに置き、手首を上げておく。手首、手指の回旋軸を上げて、前方に向かって除々に皮膚をストレッチさせるように、少しずつ手首をおろす。掌全体が皮膚に触れると同時にリンパ液の排液方向に皮膚をストレッチさせる。そして、手をリラックスさせ、皮膚が元の位置に戻るのを確認する。主に四肢に行う

③回転の技術

拇指が人差し指に対し、直角になるように広げ、平らにした状態で、皮膚上に平らに置く。
リンパ流に沿って前方に皮膚をストレッチさせ、わずかに手首を内側に動かす。手をリラックスさせ皮膚が元の位置に戻ったことを確認したら、拇指を起点に、さらに前方へ進めていく。主に胸部・腹部・背部・殿部など広い面に行う

④すくい上げの技術

掌を四肢に対して垂直に置く。拇指の関節球上を軸に、外側もしくは内側に皮膚をストレッチさせる。近位方向に回転させて、手をリラックスさせる。四肢のみに行う